2012年01月21日

私は中学、高校時代、学校の部活でず〜っと合唱に熱中し、それが現在の職業に繋がってきているが、その中間段階の一つが大学時代の合唱団活動であった。大学入学とほぼ同時に、中学校の頃から毎年のように聴きに行き憧れ的存在だった名大男声合唱団に入団し一年間、それは嬉々として学生生活を謳歌していた。入学したばかりの6月に開かれた全国の国立4大学男声合唱団の合同演奏会(たまたま名古屋で開催される順番であった)では、高校時代の顔で一人でチケットを200枚売ったりもしていた。

しかし60年安保から始まり、70年安保を控え、学生運動真っ盛りの中、合唱団の活動も次第に学生運動に感化され、そういった政治色の強い曲ばかりを歌うようになっていった(いわゆる歌声運動と呼ばれた活動である)。それはそれまでの音楽経験で味わったことの無い新鮮な感動的な経験だった。しかし高校までにたくさんのいわゆる名曲にいそしんできた身としては、偏った曲だけではなく一般の名曲も歌いたいと願い出たりもしたのだが、このご時勢に我々大学生に与えられた使命を・・・・・といったいわゆる総括を受け、残念ながら願いは聞いて貰えるような雰囲気にはなかった。

やむなく新しい合唱団を作ろうと高校時代からの合唱仲間と創立したのが名古屋大学グリーンハーモニーで、現在もそれなりに活発に活動をしており、東京在住のOBは、毎年集っている。

今日は、平均年齢68歳とのことで、私より先輩の方が多い30名近い編成で行われた(トッパンホール)。指揮は私と大学で同期の佐藤一治君。彼は現在まだ大林組で現役の建築マンだそうだ。高校までの音楽経験はゼロで、私と出合った1年生のころは当然まったくずぶの素人であり、ただただ情熱だけは人一倍、といった感じの男だった。その後男声合唱団の指揮者になったと聞き、へ〜、と半分バカにしたような(いや、そんなに悪い意味ではないが)、でもオー頑張っとるなって言う程度の感想だった。

しかし、しかし、今日はたまげた!! 悔しいけど負けた!!って感じだった。素っ晴らしい!! 最初のステージの日本の抒情歌メドレーが有名な‘故郷’で始まったとたん、え〜、ウソ! エ〜〜〜?!

次から次へと繰り出される日本の誰でも知っている懐かしい抒情歌がどれもみな徹底的にハートがある! 私と同じ指揮(私が常々やりたいと思っている指揮)をしている。 それに全員がぴったり寄り添い徹底的に叙情性に富んでいる! 今まで日本の有名歌手が出している‘白々しい、凍りつくような’日本の抒情歌のCDとはまったく違う! 生まれて初めて聴く(私の心の中ではいつも響いているのだが、現実には他人相手の場合なかなかそうはいかない)本当の日本の抒情でだった。たまげた!日本の声楽家連中は、今日のこの素晴らしい本当の日本の叙情曲を徹底的に聴き直し、分析し、自分達に何が欠けているかを知るべきである。多くの有名な歌い手が今日のレヴェルのはるか下を行っている!情けない!何がそうさせているのだろう?基礎力は当然プロの方がはるかに上であることは言うまでもないことなのに。

指揮は自由自在、好き勝手。名大卒業後私の選んだ桐朋学園であんな指揮したら零点付けられるだろうけど、あれが本当の指揮だ!音楽を表現している!当たり前のことだけど、プロはそれを恥ずかしがってやろうとしないのが日本だけでなく世界中のクラシック音楽家の最大の欠点! ベルリンフィルもウィーンフィルもどの指揮者のときもみな棒のような弾き方しかしていない。

私を専門の道へと導いてくださった山田一雄先生が、初めて私を見られた時、私は、おそらく今日の彼と同じく素人だからこそ何の束縛も無く、好き勝手に思いっきり音楽を表現していたのだろう。40年以上も前の日本合唱連盟の夏期講習会で指揮法を担当されていた先生の前に何度もずうずうしくしゃしゃり出て、皆の見ている前でモデルとして指揮をした、まだ理学部在学中のの若き内藤君。

その晩、宿舎のホテルのバーでグラスの下に敷くコースターに‘才分ある内藤君’と書いてくださったことがこの道を選択した最初のきっかけであり、我流ながら好き勝手に徹底して自分を指揮で表現したからの賜物だったと今になって思っている。指揮の原点である。

私がピリオド奏法にこだわるのは、ヴィブラートという化粧品が使えずとっても不利な条件の中でも、それをカバーするための知恵として古くからひとつ一つの音符の音価いっぱい、4分音符や2分音符がその長さを保っている間中膨らませたり逆にしたりと変化させることによって、徹底的に音楽を表現させるところにある。ヴィブラートにかまけてその重要な表現をサボっている現代の奏法に警鐘を鳴らしたいからである。

しかしプロの世界では徹底して音楽を表現することにシャイで、なぜか世界中でその一番大切な要素を避けようとしている!いつも私はそういった中でだましだまし、にんじんをブラ下げたりもしながら、如何にして結果として抒情を表現させるかということに苦心惨憺している。とっくの昔にそんなこと放棄している指揮者が多い現実の中では並大抵の努力では満足できるものにはならない。

それを今日はハイレヴェルな合唱団で(衰えるどころかリタイアして暇が出来たからか、益々盛ん)、しかも気の知れた仲間同士からか佐藤君は思いっきりやりたい放題(羨ましい!)! 良い音楽にだけまい進している佐藤君の姿には、羨望と同時に凄い尊敬の念を禁じえない! もちろん天から与えられた並々ならぬ欲求が彼をそうさせているのだろう。主観ではあるが、プロの指揮者でそこまでのレヴェルに行っている人は世界の超一流といわれている人を含め稀有だと私は常々嘆いている。

高田三郎の組曲「心の四季」は定番の曲だが、一番有名な組曲「水のいのち」と比べて今までいまいちの評価であった。ところが今日聴いて、まったく違う印象を受けた。冤罪だったのだ! こんなにも名曲だったんだ!って。 いや〜佐藤君ありがとう!すっごく勉強になった! いままであきらめかかっていた‘音楽を徹底的に表現する’ってことが現実に可能だっていうことを、アマチュアの指揮者(プロでも十分通用すると思うが)と合唱団が証明してくれたことで、明日への勇気がわいてきた! やっぱりプロフェショナルはアマチュアから貪欲に吸収していかなければならない。それだけのものを持った素人がプロよりはるかに多く存在しているっていう事実ももっと知るべきであろう。

打ち上げでは楽しく懐かしい曲をいっぱい歌って帰ってきた。大満足の一日であった。

コメント (4)

  1. はじめまして。
    私も聞きに行きました。
    「ふるさとの四季」は,素晴らしいと思いました。あの年齢でなければ表現できない・・・というか。

    Facebook経由でメッセージをお送りしておきます。

    コメント by flyingtenor — 2012/1/23 月曜日 @ 23:16:43

  2. コメントありがとうございます。私と一廻りぐらい若い後輩ですね。まだその頃も歌声運動が盛んだったのですか?懐かしいですね。私も大好きでした。でもブログに書いたようにもっと他のいわゆる芸術曲も歌いたいと言って男声を飛び出て新しい合唱団を作って・・・・。若かったんですね(笑)。演奏会の後打ち上げに出て、そういったことを挨拶でしゃべってきました。結構当時のことを覚えていてくれた仲間もいて・・・。また、他の合唱団でも活躍し、私のオーケストラを使ってくれている人も何人かいらっしゃり、あれあれってことにも。今まで同じ名大男声にいたなんてことまったく知らないまま、プロのオーケストラの代表者とアマチュア合唱団の係りの人という認識で接していましたもので。まさに奇遇という言葉がぴったりで。最後に全員でたくさん懐かしい曲を合唱して満足して帰ってきました。
    プログラムに東京ニューシティ管弦楽団のチラシ2種がはさまれていたと思います。2月3日のマーラーの5番と4月25日のヴェルディのレクイエムです。近々聴きに来てくださるって感じなことがフェイスブックに書いてありましたので一応お知らせしておきます。この書き込みか、フェイスブックででもご連絡いただければ同窓生割引を考えても良いですよ(笑)。

    コメント by tnc — 2012/1/24 火曜日 @ 1:14:50

  3. 返信ありがとうございます。
    チラシも拝見しました。名大OBの指揮者のオケだからだろう,とは思ったのですが,福生以来「オケ出身なのだろう」と決め付けてしまっていました。ましてやご本人がいらしていたとは・・・!
    ヴェルディはまず「どこが歌うのかな?」と(笑)見ていました。

    最近(そういうトシなのか),昔のコトをきっかけにした「奇遇」があります。
    今回の演奏会を知ったのも(ステージで話しておられた)N「大先輩」と,昨年の演奏会(狛江での東混との合同演奏)でご一緒したことがきっかけでした。
    このblogの記事は,大学1年の春休み(30年以上も昔です!)に聞いた,グリーンハーモニー+名大オケのフォーレ・レクイエムがきっかけで知り合った方から教えていただきました。
    昨年大晦日の「コバケン第九」打上げでは,コールグランツェOBの方と出会いました。
    2/3は練習があるので残念ですが,4/25目指して予定を調整します。

    コメント by flyingtenor — 2012/1/24 火曜日 @ 12:36:12

  4. 私は「男声」は1年間だけの在籍でした。主たる活動は【グリーンハーモニー】で、名大オケも2年間在籍しました。もっとも卒業前から卒業後にかけてですが。当時名大オケは卒団生も正式団員のまま活動できることになっていたので、OBとしてではなく‘学生’団員として最初から学生指揮者をやり、計2年間やっていました。すでに山田一雄先生の弟子としてレッスンに通っていましたし、グリーンハーモニーの創立指揮者としてかなり暴れまわっていたので、オケ側もいきなり学生指揮者にしてくれたのでしょう(笑)。楽器はヴィオラをやっていて、初めて楽器を持った2ヵ月後には本番で【運命】を弾いた事を覚えています。もっとも私は小さい頃ヴァイオリンを8年間やっていましたので、ブランクが有ったとはいえ、結構様になっていたと自分では思っています(笑)。もう一人いた学生指揮者は、名古屋フィルの打楽器奏者としてつい最近定年になるまで活躍していました。
    4月25日は是非聴きに来てください。できたら大勢誘ってくださると嬉しいです。大人数割引でもしますので(笑)。演奏レヴェルは自分で言うのもなんですが、日本で聴けるヴェルレクとしては最高峰といえると思います。合唱が凄いですから(ソロも合唱団員が受持ちます)。でも全てがプロですので、アマチュアのように切符を得ってくれません(演奏会のたびに売っていたら、年に何回販売員をやらなくてはならないか!)。ですから常に空席が・・・・(泣)。どうぞよろしくお願いします。
    内藤

    コメント by tnc — 2012/1/25 水曜日 @ 9:59:41


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