2012年04月9日

このところ、ナンヤカンヤでブログの書き込みが月に1回になってしまっています。あと2週間で定期公演がありますが、その宣伝のため高校の同期の一部の人に演奏会の案内を送りました。チラシも添付したのですが、そこにあるキャッチフレーズ「世紀の大誤訳・レクイエムは鎮魂歌ではない」むしろ騒魂歌の方がふさわしい訳だと少々オーバーに書きました。

いままで誰もそれについてクレームをつける人はいなかったのですが、我が友人から待ったがかかりました。その内容は次のとおりです。

「Oxford English Dictionary には 1.a Mass for the repose of the souls of the dead. 2.a musical composition setting parts of such a Mass. なお註に accusative(対格) of requies ‘rest’. とあります。 またラテン語の辞書には requies, f.rest,relaxation,recreation.  とあります。  

したがって鎮魂曲との訳はまあまあのできではないでしょうか!?recreationをどんなに意訳しても騒にはならないでしょう。なにか確かな文献があるのでしたらお知らせ願います。」

以上ですが、これに対する私の考えです。 

「私はレクイエムの内容から見て私の意見を主張しているのですが、このように辞書を使っての反論、いえいままで何年にも亘って主張してきた私の考えに対する反論など一度も無かったのでややびっくりして、次のように返事を出しました。このブログを見てくれている方の中にもよくお解かりではない方もいらっしゃると思い、私の考えを敢てここに載せることにしました。ご理解ください。

‘訳が間違い’という表現が適切か否かと詰問された場合、確かにあらゆる方向からの観点をすべて満足させられる表現ではないかもしれませんね。  

 

あなたがおっしゃいます辞書の訳をどう解釈するのかにもかかっているともいえます。これらの訳をクリスチャンでもない日本人が表面的に訳せば鎮魂曲としたくなるのも無理も無いかもしれません。そういう意味で、あなたの言われる‘まあまあの出来’も一概に否定できないかもしれませんね。

 

この論議は、3年前に出版しました拙著「クラシック音楽 未来のための演奏論」にも書き、今回もチラシに書いたり新聞広告に出したりしていますが、あるいは今まで多くの機会にそう説いて廻っているのですが、その論に疑問を呈されたことはなく、今回初めてです。疑問を呈されたことが無かったということは、それだけ日本人がこういった問題に無知、無関心であるという証明だったのでしょうね。  

 

私が一番主張したかったことは、誤訳というよりも、日本人独特の習慣である‘安らかにお眠りください’という仏教的な安らぎを祈るということとはまったく違うよよ!ということです。レクイエムの中身を吟味すれば(しなくても)それはよくお分かりだと思います。人間は誰しもが生前罪を犯し、しかもその罪の深さは、煉獄で火をはじめあらゆる手段による大変な苦しみを味合わされ、結果、請い願う天国の神のもとではなく地獄に落とされるにふさわしいものである。ということが前提となっており、悶え苦しみ、その地獄から何とか自分だけでも助けてくれと恐怖のあまり・・・。

 

そういったことから少しでも救われるよう、罪一等が減じられるようにという願いを‘永遠の安息を’と表現しています。そして生きている者が死者のために歌ってあげれば、罪びとである死者の罪が一等減じられるだけでなく、自分が死んだ時、最後の審判で自分の罪も減じられるという、免罪符が否定された後に生まれた、カトリック信者でない我々からすれば、まさにいかさまのような言い伝えを信じ、わらをも掴む思いでもって歌い継いできたのがレクイエムです。もちろんその後の各種利害関係(教会や作曲家、演奏家、他さまざまな関係者による)により、その後様々な変遷を経て現在に到っているのですが。

したがって、上面だけで訳されている辞書を、しかも、ごくごく表面的に読んでしまうと、一見‘鎮魂曲’という訳が正しいかのように見えるかもしれません。しかしそこで言われる‘永遠の安息を’は日本で言う、罪びとではないことになっている死者に対する単なる表面的な‘安らかにお眠りください’の意味(大半の日本人はそう思っているはずです)とはまったく違うわけで、そういう意味で、この訳は不完全であり、普通の日本人には大きな誤解を与えやすい、すなわち結果として ‘世紀の大誤訳’といわざるを得ません・・・・となるわけです。

 

私は敢てそう主張し、多くの日本人にその本当の中身を知ってもらいたいと願っているのです。 ‘騒魂歌’とは、単に皮肉に言っただけに過ぎないのですが、昔のカトリック信者は死んで最後の審判にかけられることが恐ろしく、まさに騒魂状態であったことは事実であったそうです。だからこその免罪符であり、その後のレクイエムに繋がっていったのです。こんなことあなたにとって‘言わずもがな’だと思いますが、一応念のために。  

 

ところで今回の定期は、ものすごくレヴェルの高いレクイエムになりますので、出来ましたらおいでください。よく日本で公演する○○○座のレクイエムとは雲泥の差があると思います。今回はおそらく日本初演になる、ロッシーニの葬儀用に何人かの作曲家で連作したときの「リベラメ」を使います。興味がおありではないでしょうか?」 

内藤 

 

 

 

コメント (2)

  1. 楽しみにしております。FBにメッセージをお送りしました。

    コメント by flyingtenor — 2012/4/21 土曜日 @ 0:52:28

  2. ありがとうございます。ご期待に添えるよう頑張ります。

    コメント by tnc — 2012/4/21 土曜日 @ 10:25:34


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